改めて自己紹介してみた(ヘクソのお話)
私はヘクソカズラ子、三日で母の在宅介護にギブアップしたおちこぼれだ。さすがに三日坊主の日記とは違ってすぐに放り出せない。正確に言えば母と暮らした年末年始の十日間、本当に濃いとしか言えない時間だった。介護を始めるにあたって始めたブログ。どうしてこうなった、知人に説明するのも疲れてきたのでブログを読んでくれと言っている。
さてカズラ子のヘクソとは世間一般ではカメムシのことだ。
このヘクソを食べた人を二人、いや一人と一匹知っている。
一匹というのは正式に書いているだけでペットは家族という時代に匹で言うのはちょっと憚られるけれど。今から四十年も昔の話になるが、ポメラニアンのペリーって子が居て、かわいくて一挙手一投足をずっと眺めていられた。ある日庭で遊んでいたそのペリーが泡を吹いて意識朦朧的になっているではないか。思わず抱きかかえたその子の口から臭ったのはまさしくヘクソ臭。
食べちゃったのかペリーくん。
よかった、死なないよな。
心配したんだから。
ごめん、笑える。
君の災難を笑ってごめん。
もう一人というのは私の父方の祖父だ。
ペリーの災難よりずっと昔のことだけれど、知ったのはずっと後のことで母の告白による。
まだ母が嫁いで間もない頃、
夕餉のおかずに菜っ葉のお浸し、
運悪く例のヤツが盛られたお皿を手にしたのは
ちょっとだけ母と相性のよくない祖父。
その時の味がどんなだったか、
母の話からは見えてこなかったけれど、
母の意図が盛られていたわけではないことだけは、
母の名誉のために添えておく。
でも考えただけで怖い。茹でられたヘクソってどんな味がしたのだろう。昆虫食というものがあるとはいえ、素材には絶対ならないだろうな。
参考までにトムヤンクンに欠かせない香菜のパクチーは和名をカメムシソウと言う。好き嫌いが分かれるのも納得の味がする。種を巻けば容易に栽培できるパクチーを初めて口にしたとき私は吐き出したけれど、慣れれば好きに変わる。ヘクソの味を体感したければパクチーを少しだけかじってみてほしい。カメムシソウって名付けた人に座布団一枚どうぞしたくなるから。
私はヘクソをティッシュで臭いなく捕まえられる。よくすごいって言われる。ヘクソって人間が心地よいと思える季節にブンブンと飛び回りスッと着地する。年によっては口を開いていれば飛び込んできそうな勢いで数十匹が飛んでいる、そんな地域で育ったから辟易とはするけれど見ても平気だ。ちなみに大人になるまで免疫のなかったゴキブリはギャーって叫ぶし、寒気がするし、逃げ回る。あれほどのヘクソの大群の原因は杉の木の山林にあるのだそうだ。一つ忠告すると、そのカメムシ決して掃除機で吸わないで。しばらく使えないから。掃除機の電源オンにする度にめげるから。
ヘクソカズラはつる性の夏から秋に薄ピンク色の花を咲かせる雑草だ。蔓延るし、花弁は臭いし迷惑な植物だけれど見ている分には可愛い。薬草としての効能も持っている。昔は重宝されたのだろうがその強烈な臭いからヘクソのような蔓と名付けられたのだろう。たぶん漢字を充てたら屁糞葛だと思うが別名はサオトメカズラとも言う。嗅覚で名付けたか視覚で名付けたかでこれだけ印象が違う。
私はヘクソカズラ子、またの名をサオトメカズラと言う。
色鉛筆で塗ってみました。
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